フリーゲーム『CardWirth』の自作シナリオを公開しています
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永遠亭のけだるい昼下がり。
カウンターにいる亭主は黙って皿を磨き
女給の娘はサボって鼻歌なぞ歌っている。
そう多くはないが昼間から酒を呷る冒険者崩れや
カード遊びに興じる連中もたむろしている。
宿の見慣れた日常の光景だ。
ただ、いつも決まってそこにいた連中・・・
長身の冒険者、白頭の老戦士、チンピラ風の盗賊に、場違いな子供。
暗い色のローブを被った陰気な魔法使いの姿はもう、ない。
※
娘 「最近、インテリさんたちの顔見ないわね」
亭主 「ん・・・そういえばそうだな。どこかでくたばったかな?」
厨房からぽつりと漏れた娘の言葉に相槌を打ち
宿の亭主はふと皿洗いの手を止めた。
確かに、もうかれこれ数年は連中の姿をみた記憶が無い。
どこかで果てたのでなければ、他所へ移っていったのだろう。
元来が風来坊とはいえ、いずれにせよ水臭い連中じゃないか。
そう胸中で呟くと亭主は我しらず酒場の隅の空いたテーブルに目をやった。
※
若い男 「ただいまー」
両開きの扉が遠慮なく開かれ、見知らぬ若い男が酒場に入ってきた。
亭主 「はて、誰だったかな」
若い男 「ひどいな親父さん。僕だよ」
皮鎧に小剣を下げ埃じみたマントという
冒険者お決まりのスタイルに身を固めた男は、
いかにも心外だ、という風に小さく肩をすくませた。
首に下げられた銀色の指輪が揺れる。
亭主 「・・・ひょっとして お前、小僧か!」
男の首に革ひもでくくられた銀色の指輪に、確かに見覚えがあった。
それを見て、ようやく亭主は彼がインテリ一行で小僧扱いされていた少年と
同一人物であることに気づいたのだ。
※
亭主はかって小僧であった男の口から、インテリ一行のその後の消息を聞いた。
オヤジは老齢から引退して郷里に帰り、剣術道場主に収まったそうだ。
CV古川は、盗賊ギルド幹部の娘を孕まして姿をくらまし、行方が知れず。
どこまでもマイペースな根暗は、死霊術の秘儀を求めて独り東方へ旅立ったらしい。
仲間をなくしたインテリは、それを潮に冒険者として一人立ちしたという。
若造 「・・・というわけで、みんな散りぢりさ」
亭主 「まぁ変わった連中だったからな。・・・それで、お前は何をやっているんだ?」
若造 「しばらくはオヤジさんの道場を手伝ってたんだけど
人手は足りてるから他所へいけってさ。薄情だよね」
そう言って明るく笑う若者の表情に拗ねた様子や
かつての奴隷の暗い影は微塵もない。
亭主 「ふん、一人前の男なら自分の食い扶持くらい自分で稼げってことさ」
若造 「そう言うなら、何か仕事紹介してよ」
宿の亭主は、「そうだな・・・」と振り向いて壁の羊皮紙に目を向ける。
小僧に気づいた娘さんが歓声をあげて厨房から出てきた。
紫煙混じりの空気の不味ささえ、相も変わらずだ。
そうして、永遠亭の変わらぬ日常が再び幕を上げる。
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以前のブログと共にカードワースリプレイ日記が沈んでしまったので
一応、ケジメということで最終回を置かせて頂きました。
中途半端になってしまい、誠に申し訳ございません。
インテリ一行の冒険譚はこれにておしまいです。
前のブログもプレイ日記も知らないぞ、という方にしてみれば
ブログが始まったかと思ったらいきなり最終回!?という感じで
何がなんだかわからず不快かと思いますが、どうかご勘弁下さい。